長官の台詞  



◆1巻「唖の十蔵」―孤児となったお順を引き取ろうと、久栄の承諾を得た直後

 

「俺も妾腹の上に、母親の顔も知らぬ男ゆえにな・・・」

三尺余りある鉄鞭

◆1巻「本所・桜屋敷」―白州からでたおふさを目の前に見た時

 

「女という生きものは、過去(むかし)もなく、さらに将来(ゆくすえ)もなく、ただ一つ、現在(いま)のわが身あるのみ…ということを、おれたちは忘れていたようだな」

三尺5寸の十手

◆1巻「血頭の丹兵衛」―血頭丹兵衛の所業を見て

 

「ちからまかせの押し込み強盗なら、悪党であれば誰にでも出来る。女を犯し、人を殺すというのは、真の盗賊のなすべき業ではないのだ」

◆浅草・御厩河岸―佐馬にあと5年の命と言われ

 

「あと六年か・・・やることだけはやってのけておくことだな」

◆座頭と猿―2人の男を失った後のおそのを見て

 

「あの色っぽい体へ、男のにおいがしみつくごとに、あの女は得体の知れぬ生きものとなっていくのさ。どんな女にも、そうしたものが隠されているらしいが・・・」

◆むかしの女

 

「佐馬。雷神党のような浪人くずれには打つ手がないのだよ。おそらく大丸屋にゆすりをかけたのもこいつらだろうが……そのゆすり方ひとつ見てもわかる。まるで獣だよ。世の中の仕組が何もわかっていねえのだ。獣には人間の言葉が通じねえわさ。刈りとるよりほかに仕方はあるまい」

恩義居合術

◆蛇の眼―平蔵のやり方にお上が

 

「お上が、おれのすることを失敗と断じて腹を切れというなら、いつでも切ろう。世の中の仕組みが、おれに荒っぽい仕業をさせぬようになれば、いつでも引き下ろう。だが、一の悪のために十の善がほろびることは見のがせぬ。むかしのおれがことをいいたてるというのか・・・

ばかも休み休みいえ。悪を知らぬものが悪を取りしまれるか」

◆谷中・いろ茶屋―忠吾が実は娼婦に会いに、長屋をぬけだしたと白状した時

 

「人間というやつ、遊びながらはたらく生きものさ。善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事を働きつつ、識らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ」

2巻「妖盗葵小僧」死のうとしたお千代に

人間にとって時のながれほど強い味方はないのものだ

埋蔵金千両―盗賊の隠し金千両を黙って我が物にしたおけいを見て

 

「ああした女は、根は悪くないものだ。いやなに、きれいな衣装をまとい、椎茸髱(しいたけたぼ)なぞに髪をゆい、おれなぞを見ても見向きもせぬようなえらい女が、江戸城の中にうようよと泳いでいるが、・・・・」

「あいつらの悪事(わるさ)ときたら、いやはや、ひどいものさ

ところが御城と将軍家の御威光で、悪事が悪事にならぬ。

それにくらべたら、おけいなぞはずっとましだわ」

3巻「麻布ねずみ坂」―きちんと確認をしないで宗仙が約束を違えたと謝って判断した白子の菊右衛門に

 

「男と男の約定をきびしくするのは結構なれど、このたびの場合中村宗仙ほどの立派な人物をろくにしらべもせぬまま殺そうとした。約束事というのはむずかしいものじゃ、人間と人間の誓いゆえ、なおさらな・・・・」

◆3巻「麻布ねずみ坂」―宗仙が女の墓をつくって、骨もないのにと、言った山田に。3巻P36

 

「遺体がなくとも、墓は墓だ。その墓にほうむられた人をしのび、これを供養した人のこころがあるかぎり、立派な墓なのだよ」

3巻「兇剣」―賊に囲まれて、危機に陥った平蔵の思考

 

絶望や悲嘆に直面したときは、それにふさわしい情緒へ落ちこまず、笑いたくなくとも、先ず笑ってみるのがよいのだ。

粟田口国綱2尺2寸9分

4巻「霧の七郎」―暗殺に剣の腕を使った上杉浪人の本当の人柄をみて

 

「上杉さんは、あの顔かたちで損をしつづけて来たのだ。世の中の人間の多くは、うわべだけで人の値打ちをはかってしまうゆえ」

4巻「夜鷹殺し」―夜鷹殺人事件に幕府がのりきでないのに対し
  「夜鷹とても、人ではないか!」 粟田口国綱2尺2寸9分
4巻「夜鷹殺し」―夜鷹に恨みをもった殺人犯
  「夜鷹を殺しているうちに・・それが、病みつきになって」

「人のこころの病気というは、まことに、はかりきれぬわえ」

 
6巻「剣客」―恨みを買うはずのない人柄の松尾喜兵衛が殺害され
「剣の試合の意趣遺恨は、それほどに根深いものよ」
9巻「鯉肝のお里」―お里を置いた元盗賊の長虫の松五郎の扱いにつき
「足を洗って20余年。七十をこえて煙管つくりに打ち込んでいる松五郎を、捕らえたところではじまるまい。それよりもよい煙管をつくらせた方が、世の中が、こころゆたかになろうというものではないか」
9巻「泥亀」―関沢の乙吉から奪った50両が堅気の盗賊の未亡人と子供の店に変わって。
「そりゃ、取り戻すっことはわけもない。ないが、しかし・・・そうなると、せっかく荒物屋の店がもてた母と盲目の娘が、またしても浮世の荒波にもまれつくさねばならぬ」
9巻「本門寺暮雪」―久栄の髪飾りが壊れ、平蔵の外出を心配する久栄に

「お前のこころざしはうれしい、平蔵したしかに受けたぞ、さて・・お上の用なれば何といたす?」

「久栄。よし、おれが身に万一のことがあっても覚悟の上ではないか。男には男のなすべきことが、日々にある。これを避けるわけにはまいらぬ・・・・」

9巻「本門寺暮雪」―金をもらって一晩してから殺人を受けたことを後悔した録之助の話に

「それはな、録さん。お前の腹が膨れたから、そうした考えが生まれてきたのだ」

9巻「浅草・鳥越橋」―傘山の瀬兵衛
 

「鬼には鬼、蛇には蛇の油断があるものなのだ」

 
 
9巻「狐雨」―五郎蔵に

「いい女だろう、おまさ」

9巻「狐雨」―青木助五郎の噂

「人のうわさというものの半分は嘘だ。まして、われらの御役目は、善と悪の境目を綱わたりして行かねばかなわぬことが多い。」

11巻「土蜘蛛の金五郎」―善行を行うどんぶり屋を知り

「悪事をはたらき、悪逆の臭いからはなれたい、忘れたいという気もちになるらしい」

「人なみに善いことをして見せたくなる。悪事で得た金で善事をおこなう。それで、胸の中がなぐさめられる。申せば悪党の虚栄なのだ。」

11巻「泣き味噌屋」―旗本の仕業を知り

「あのような悪業をしておきながら、恬として恥じぬ。小さいころから若殿様の御身分であまやかされ、おのれのすることは何でも通るものとおもいこまされ、他人はみな、おのれに従うものと考えている。」

11巻「密告」

「あのような残酷な悪人でも、恩愛の情にはもろいものだ。それと申すのも、お百は紋蔵を、よほどに可愛がって育てたのであろう」

近江守助直
14巻「殿さま栄五郎」―人足寄場の建言を「そのような小細工・・・」と幕閣に退けられ

「何をいうことやら・・・・・」

「浮浪の徒と口をきいたこともなく、酒をのみ合うたこともない上ツ方に何がわかろうものか。何事も小から大へひろがる。小を見捨てて大が成ろうか」

14巻「浮世の顔」―悪事を働いて殺された佐々木の変死体の前で左馬が「よほどに、いそがしい事」といい、

「何につけ、悪事というものはいそがしいものよ」

―仇討ちに出た佐々木は女を手篭めにしようとして殺害され、仇相手の坂口も暴行未遂で逮捕され・・・

「もとはといえば、稲荷信濃守の家中で起きた喧嘩沙汰から、佐々木が敵うちの旅に出・・・それがために小娘がひどい目に会い、ひいては神取一味へまで波紋がひろがり、このため、長崎屋と釜屋の二つの商家が難をまぬがれ・・・・となると、佐々木の所業が、二つの商家の人々の命を兇賊どもの手から救ったことに・・なんとおもしろいではないか、左馬之助」

「これが、浮世の仕組みというものなのだよ

「人が何か仕出かすことは、必ず、何らかの結果をまねくことなのだ。あたりまえのことだがね

「その当たり前のことを、人という生きものは、なかなかに、のみこめぬものなのさ、このおれもそうだが・・・

「のみこめていりゃあ、人の世の苦労もねえわけだが・・・・

「そのかわり、つまらねえ世の中になってしまうだろうよ

15巻「赤い空」―盗賊の鍵を作っていた鍛冶屋の助次郎は無料宿を設けていた
「金と申すものは、おもしろいものよ。つぎからつぎへ、さまざまな人びとの手にわたりながら、善悪二様のはたらきをする」
























   長谷川 平蔵の舌   

 

下谷車坂町代地の〔小玉屋〕 薬味だの天ぷらなど一切媚びを売らない太打ちのくろい田舎蕎麦のみで勝負。平蔵は10日口にしないとおもい出す。。。という程のお気に入り 11巻「土蜘蛛の金五郎」
卵酒 小鍋へ卵を割りこみ、酒と少量の砂糖を加え、ゆるゆるとかきまぜ、熱くなったところで椀へもり、これに生姜の搾り汁を落す。これが平蔵好みの卵酒。 11巻「毒」

 






鬼平楽